※本記事にはプロモーション(アフィリエイトリンク)が含まれます。
※個人や勤務先が特定されないよう、一部の経緯は変更・一般化しています。
医局を辞めたい。でも切り出せない——その理由でいちばん多いのは、「引き止められるのが怖い」ではないでしょうか。
先に、私の場合を正直に書きます。私は、引き止められませんでした。 そして教授と話した時間の大半は、引き止めの応酬ではなく、「誰に何を引き継ぐか」の相談でした。
私は引き止められなかった(ただし、一般化はしません)
退局を切り出す前は、私も身構えていました。実際には、強い引き止めを受けることなく、話はそのまま実務の引き継ぎへ進みました。
ただ、これを「引き止めは大したことない」という話にするつもりはありません。 引き止めの強さは、医局の人員状況、その年の入退局のバランス、教授との関係、切り出す時期によって、まったく変わります。強く引き止められる人は実際にいます。 私が引き止められなかったのは、単にそういう状況だったからかもしれません。
それでも書いておく価値があると思うのは、「引き止められる場面」を想像して止まっている人が、実際に使う時間は別のところにあるかもしれないからです。
実際に話したのは、引き継ぎのことだった
私が教授と具体的に相談したのは、自分が担当していた業務を、誰に引き継いでもらうかでした。
辞める側の視点だと、退局の話は「辞める/辞めない」の交渉に見えます。でも受ける側にとっては、目の前にあるのは人が一人抜けたあとの穴です。だから話は自然と、その穴をどう埋めるかへ移ります。
ここで大事なのは、引き継ぎ先を自分で決めることではありません。誰に振るかは医局の采配です。ただ、自分が何を抱えているかを、相談できる形にして持っていくことはできます。
- 定期的に担当している業務が何と何か
- 期限や区切りがあるもの(年度・学会・進行中の予定)はどれか
- 自分でなくても回るものと、引き継ぎに説明が要るものの区別
- 院外との関係が絡むもの(あれば)
私の場合も、この整理があったので、話が「辞めるかどうか」で止まらずに進みました。因果は分かりません。引き止められなかったのは状況のおかげかもしれません。ただ、用意しておいて損はしなかったとは言えます。
「代わりの絵」を持っていく
引き止めが起きる理由を、感情の問題として考えると身構えるばかりになります。でも、引き止めの実体は多くの場合「人が足りなくなる」という運用の問題ではないかと思います。
だとすれば、備えるべきは反論の言葉ではなく、抜けたあとの絵です。何を誰に渡せるのかが見えていれば、話す相手にとっての問題は小さくなります。
もう一つ。次の当てがないまま切り出すと、引き止めに応じる以外の選択肢がなくなります。 「では残ってくれるな」と言われたとき、外の選択肢を何も知らなければ、判断材料がありません。切り出す前に外の求人を眺めておくことは、交渉のためではなく、自分の判断のために効きます。
▼無料登録はこちら
医師転職ドットコム法律上のルールと、医局の実務はズレている
「辞めさせてもらえないのではないか」という不安には、知識で備えておけます。
厚生労働省の公表資料によれば、期間の定めのない労働契約で働いている場合、退職しようとするときは原則として2週間前までに申し入れることと定められています(民法627条1項)。一方、あらかじめ契約期間が定められている(有期)労働契約では、契約期間の満了前に退職するにはやむを得ない事由が必要です(民法628条)。ただし契約期間が1年を超えるものについては、1年を経過した日からはいつでも退職できるとされています(労働基準法137条。高度の専門的知識等を有する労働者や満60歳以上の労働者との契約は除く)。出典は厚生労働省「確かめよう労働条件」です。
大学病院では、任期の定めがある身分で勤務している場合もあります。自分の契約が期間の定めのないものなのか、有期なのかは、契約書で確認しておいてください。
そのうえで、同じ資料は「一般的に就業規則等に退職の手続が定められていますので、就業規則等で退職手続がどうなっているかも確認したうえで、ルールを守った適切な退職手続をとることがトラブル防止のためには重要です」としています。
つまり、法律上の最低ラインと、実際に踏むべき手順は別です。医局の実務は年度の区切りと後任の確保で動くので、2週間という数字を持ち出す場面はまずありません。これは「辞められない」わけではないと知っておくための知識であって、行動の指針ではない、という距離感で持っておくのが実用的だと思います。
円満に離れるのは、感情ではなく実利
医局の世界は狭く、離れた後も学会・専門医の更新・症例の相談で必ずどこかで繋がります。円満に離れるのは、気持ちの問題ではなく実利です。
退局の理由を並べ立てる必要もありません。前向きで反論しにくい理由を一つ。嘘は要りませんが、全部を言う必要もない——これは私が実際にそうしましたし、いまも変わらず有効だと思っています。
まとめ
- 引き止めの強さは状況次第。 私は引き止められなかったが、これは一般化できない
- 実際に時間を使ったのは「誰に何を引き継ぐか」の相談だった
- 備えるべきは反論の言葉ではなく、抜けたあとの絵(担当業務・期限・説明が要るものの整理)
- 次の当てがないまま切り出すと、引き止めに応じる以外の選択肢がなくなる
- 法律上のルール(民法627条・628条/労基法137条)は知識として持ちつつ、実務は就業規則と年度の区切りで動く
- 円満に離れるのは感情ではなく実利
切り出したあとの具体的な段取りは医局を離れて転職するまでの段取りに、辞めると決める前に確認しておくことは医局を辞める前に確認しておくことに、実際に辞めるときの事務手続きは医局・病院を辞めるときの事務手続きチェックリストにまとめています。次の職場の内定が出たあとに確認しておく条件は内定後に確認しておく労働条件です。
(※法令や運用は改定されることがあります。実際の手続きにあたっては、勤務先の就業規則と、必要に応じて厚生労働省・都道府県労働局等の公式情報をご確認ください。)
切り出す前に、外にどんな選択肢があるのかだけでも見ておくと、判断がしやすくなります。
▼無料登録はこちら
医師転職ドットコムいまの自分に合う記事の読む順番を知りたい方は、医師の働き方診断「読む処方箋」もどうぞ。
この記事を書いた人 医師のキャリア迷子相談室。医師・医学博士・日本医師会認定産業医。大学病院勤務を長く経験したのち、クリニック勤務へ。退局を切り出した日のことはnote「医局を退局することを教授に告げた日」に書いています。
※本記事中の制度・法令は執筆時点の公開情報に基づくものであり、改定されることがあります。最新かつ正確な情報は、厚生労働省・都道府県労働局等の公式発表をご確認ください。

コメント