産業医への転職を考えて動いた話|専属にはならず「スパイス」として続けている理由【現役医師の体験談】

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※個人や勤務先が特定されないよう、一部の経緯は変更・一般化しています。案件の具体的な企業名・条件は記載しません。

私が転職活動を始めたとき、最初の入口は産業医求人でした。

結論から書くと、私は専属産業医にはなりませんでした。 いまは臨床を本業にして、産業医は嘱託という形で続けています。

「産業医に転職した話」を探している方には、期待と違う結論かもしれません。ただ、産業医を入口に動いてみて、結果的に本業にしなかったという経路も、判断材料としては役に立つと思うので書き残します。

産業医求人に登録すると、何が起きるか

産業医の求人紹介に登録して最初に分かったのは、こちらから探しに行くというより、向こうから案件が送られてくる形だということでした。

流れはとても単純です。

  • 紹介会社から案件の案内メールが届く
  • 内容を読んで、興味があれば返信する
  • 返信すると、担当者から具体的な流れの案内が来る

興味がなければ何もしなくていいので、登録しておくこと自体の負担はほとんどありません。ここは想像と違いました。産業医の仕事の全体像は産業医という働き方にまとめています。

案件メールには何が書いてあるか

具体的な企業名や条件は書けませんが、書かれている項目の構造は共通しています。

  • 訪問頻度と訪問時間(月1回・1回あたり何分、など)
  • 訪問候補の曜日と時間帯(調整の余地があるかどうかも書かれる)
  • 報酬(1回いくら、という形式。臨時訪問や延長の扱いも併記されることが多い)
  • 交通費の扱い(実費か、距離単価か。支給条件がつくこともある)
  • 開始時期
  • 募集の背景
  • 実務上の条件(産業医経験が必須かどうか、持参物、訪問後に提出するものがあるか など)

そして、私がいちばん「なるほど」と思ったのがこの一文でした。

「本案件は、複数の先生に同時にご案内しております。別の先生で調整が進んでしまう可能性がございます」

つまり一斉配信で、早い者勝ちです。じっくり考えてから返事をしようとすると、その間に埋まることがある。気になった案件は、決める前でもまず一報を入れておくほうが現実的だと分かりました。

条件面で見るべき点は産業医求人の探し方に整理してあります。

送られてくるのは、ほぼ嘱託だった

ここが、この記事でいちばん伝えたいことです。

待っていると、嘱託の案件にしか出会いません。

私のところに届いた案内は、基本的にすべて嘱託でした。月1回や隔月で数時間訪問する、というタイプのものです。

専属の案件が無いわけではありません。 サイトに行けば掲載されています。ただ、専属は自分から探しに行かないと出会わない——この非対称があります。

「産業医に転職したい」と思って登録しても、届くのは副業規模の案件ばかりなので、それだけを見ていると「産業医で食べていく」という選択肢が視野に入らないまま終わります。専属を考えているなら、メールを待つのではなく求人サイトを自分で見に行ってください。

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住んでいる場所で、届く頻度が変わる

これも登録してみないと分からなかったことです。

いま都市部に住んでいて、案内は週に2〜3件ほど届きます。地方に住んでいた当時は、週に1件あるかないかでした。

案件の絶対数は、都市部のほうが明らかに多い。ただしそのぶん競争も激しい(先ほどの「早い者勝ち」がそのまま効きます)。

逆に地方は数が少ない代わりに、手を挙げる医師がもっと少ない。私が一社目を地方で得られたのはこの構造のおかげでした。詳しくは産業医の「一社目の壁」の越え方に書いています。

案件が多い場所が、始めやすい場所とは限りません。

私が専属を選ばなかった理由

理由は2つあります。

一つは条件面です。サイトで専属の案件を見て、提示されていた給与が、自分にとって魅力を感じる水準ではありませんでした。これは人によって評価が変わるところなので、「専属は割に合わない」と一般化するつもりはありません。私の場合はそう感じた、というだけです。

もう一つは、もっと単純で、自分の専門の臨床を続けるほうが面白いと思ったからです。

産業医の仕事に価値がないという話ではまったくありません。ただ、自分が毎日やっていたいのはどちらかと考えたとき、答えがはっきりしていました。

結果として選んだ形

最終的に私が選んだのは、臨床を本業にして、産業医は嘱託で持つという形でした。

送られてきた案件のうち2件は、実際に勤務まで進みました。いまも続けています。嘱託産業医として実際に何をしているかは嘱託産業医は実際に何をしているのかに、報酬の実際も含めて書きました。

そして、いま思っていることはこれです。

経験として、スパイス的に産業医をやるのは有りだと思っています。でも、本業にしようとは思いません。

臨床とはまったく違う視点が入るので、持っていて損はない。ただ、それは軸をもう一本持つという話であって、軸を差し替える話ではなかった、ということです。

どちらを選ぶかの分かれ目

自分の経験から言えるのは、この問いに答えが出ているかどうかだと思います。

「診療そのものを続けたいか」

続けたいなら、専属に移る理由は弱くなります。嘱託で持てば、産業医の経験は手に入ります。

一方で、臨床から離れること自体に前向きな理由があるなら、専属は現実的な選択肢です。その場合は、届くメールを待つのではなく、自分から求人を見に行く必要があります。

なお、転職活動そのものは産業医求人だけで進めたわけではありません。求人サイト・直接応募・エージェント・知人紹介を並行して使いました。その考え方は医師の転職活動は「併用」が基本にまとめています。

まとめ

  • 産業医求人に登録すると、案件は「送られてくる」。興味があれば返信する形なので、登録の負担は小さい
  • 案件メールは一斉配信で早い者勝ち。気になったらまず一報を入れる
  • ★届くのはほぼ嘱託。専属は自分から探しに行かないと出会わない
  • 住む場所で頻度が変わる。都市部は案件が多いが競争も激しい。地方は少ないが手を挙げる医師がもっと少ない
  • 私は専属を選ばなかった。条件面と、自分の専門の臨床を続けたいという理由から
  • スパイスとして産業医を持つのは有り。ただし本業にするかは別の問い

産業医を本業にするかどうかは別として、まず案件がどう流れてくるかを見てみるのは、登録の負担に対して得られる情報が多い選択だと思います。

常勤の転職そのものを考えているなら、そちらは別のルートで並行して見ておくほうが判断しやすくなります。

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いまの自分に合う記事の読む順番を知りたい方は、医師の働き方診断「読む処方箋」もどうぞ。


この記事を書いた人 医師のキャリア迷子相談室。医師・医学博士・日本医師会認定産業医。大学病院勤務を長く経験したのち、クリニック勤務へ。転職活動の実体験はnote「医師転職体験記」で連載しています。

※本記事中の制度・条件は執筆時点の個人の経験および公開情報に基づくものであり、案件の内容や報酬は企業・紹介会社・時期によって大きく異なります。実際の条件は必ずご自身でご確認ください。

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