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※個人や勤務先が特定されないよう、一部の時期・経緯は変更・一般化しています。
日本医師会認定産業医の資格は、所定の研修を受ければ取れます。修了試験があるわけではないので、受講そのものでつまずくことは、まずありません。
大変なのは、その前と後です。いまは、そもそも「集中講座の席を取る」ことが最初の難関になっています——受講料は倍になり、申込は抽選です。そして取ったあとは、5年ごとの更新で自分で戦略的に単位を集めなければならない。受講そのものより、その前後のほうが大変、というのが正直なところです。
私は2017年に、産業医科大学の集中講座で取りました。6日間、北九州まで通って一気にです。ただし正直に書くと、いま取る人の条件は、当時とかなり変わっています。
この記事では、公式の要件と、私が実際にどう取ったか、そしていま取る人が知っておくべき変化を整理します。
取得に必要なもの(公式)
まず制度から。公益財団法人産業医学振興財団の公表情報(執筆時点)では、こうなっています。
- 産業医学基礎研修 50単位以上
- 前期研修 14単位以上
- 実地研修 10単位以上
- 後期研修 26単位以上
- または、産業医科大学の「産業医学基本講座」修了者/「産業医学基礎研修会集中講座」修了者
- 申請:基礎研修の最終受講日から5年以内に1回限り
- 審査・登録料:10,000円
- 登録の有効期間:5年
つまり、やるべきことは**「基礎研修50単位を満たす」**か、産業医科大学の講座を修了するか。私が選んだのは後者でした。
補足:「集中講座」は産業医科大学だけではありません
ここは誤解されやすいので先に書いておきます。基礎研修を数日間に凝縮した「集中講座」は、産業医科大学以外でも、各地の大学や医師会が開催しています。 開催地・時期・日数・申込方式はまちまちで、年度ごとにも変わるため、この記事で網羅することはしません。
探すなら、産業医学振興財団の研修検索が起点です(更新のときと同じ入口)。全国の認定産業医研修をここから探せます。
私はたまたま産業医科大学のものを受けましたが、あなたの住む地域や、都合のつく日程で選べる可能性があります。「産業医大まで行かないと取れない」ということはありません。
(※制度・要件は改定されます。実際に取得される際は必ず産業医学振興財団の公式情報で最新をご確認ください。)
私の場合:6日間の集中講座で一気に取った
2017年(平成29年度)の夏期集中講座を受けました。当時の受講案内が手元に残っています。
- 期間:6日間(2017年7月31日〜8月5日)
- 内容:講義40時間+実習10時間=計50時間
- 場所:産業医科大学(北九州市八幡西区)
- 受講料:80,000円(教材・講義資料代込み)
北九州まで行って、6日間みっちりです。案内には東京からの往復航空券プランや宿泊のオプションまで用意されていて、全国から人が集まる前提の設計でした。折尾の駅にはその時にお世話になりました(先日たまたま写真を見かけて、ずいぶん綺麗になっていて驚きました)。
なぜ集中講座が効率的なのか
講義40時間+実習10時間=50時間。財団の公式でも「集中講座修了者」が取得ルートとして明記されているとおり、この6日間で要件を丸ごと満たせる設計です。各地の研修を少しずつ積み上げて回る必要がありません。
そして——日程を確保して受講しさえすれば、それで要件は満たせます。更新のように「どの単位が足りない」「枠が取れない」と自分で組み立てる必要はありません。受講そのものでつまずく心配は、まずしなくていいわけです。
だからこそ、いまの本当の難関は、別のところにあります。
いまの難関は、講義ではなく「席を取ること」
ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。当時と現在を、公式情報で並べます。
- 受講料:80,000円(2017年)→ 160,000円・税込(現在)=2倍
- 申込方式:先着順(当時)→ 抽選(現在)
当時も競争率はそれなりにありましたが、受付開始の直後に応募したら間に合いました。いまは産業医科大学の公式を見ると抽選で、「定員の3倍を超える申し込みがあった場合は、申込受付期間にかかわらず締め切ることがある」とまで書かれています。先着順で早く動けば取れた時代は、もう終わっているわけです。
9年で受講料が倍になり、先着順が抽選になった。つまり——**いま認定産業医を取るうえでの最大のハードルは、講義の内容ではなく「席を確保すること」**です。抽選に外れれば、その年は取れません。講義に出るまでが、いちばん大変になっている。
だからこそ、この事実が意味するのは単純です。取るなら早いほうがいい。これは私自身の「いい時期に取れた」という実感の、客観的な裏付けでもあります。
見落としがちな罠:単位を取ることと、認定されることは別
ここがいちばん実務的で、かつ知られていない点です。
「産業医の研修単位を取る」ことと、「日本医師会認定産業医になる」ことは、別の手続きです。単位を集めただけでは認定されません。集めた単位をもって、日本医師会に申請して、はじめて認定されます。
そして冒頭の公式要件のとおり:
- 申請は、基礎研修の最終受講日から5年以内に1回限り
- 認定の有効期間は、そこから5年
つまり——単位を取った瞬間から5年の時計が動くのではなく、申請した時点から有効期間の5年が始まる。ということは、取得のタイミングと申請のタイミングは、分けて考える余地があるわけです。
単位を取ってすぐ申請すると、産業医として実際に活動しない期間も有効期間を消費し、使わないうちに更新(5年で20単位)がやってきます。実際に産業医をやる時期から逆算して申請する、という考え方もある。ここは意外と見落とされがちなので、申請前に必ず公式で最新の取り扱いを確認したうえで、自分のタイミングを考えることをおすすめします。
なぜ取ったのか
私がこれを取ったのは、キャリアのかなり早い段階でした。特に産業医をやる予定があったわけではありません。将来の選択肢のために、取れるものは取っておく——それだけの方針です。この方針は今も変わっていません。
結果として、この判断は正しかったと思っています。当時8万円・先着順で取れたものが、いまは16万円・抽選です。そして何より、産業医という選択肢を持っていること自体が、キャリアの逃げ道になる。臨床一本で行き詰まったときに、もう一つの道があると知っているだけで、判断の自由度が違います。
まとめ
- 取得は基礎研修50単位(前期14・実地10・後期26)、または産業医科大学の講座修了
- 「集中講座」は産業医科大学だけではない。各地の大学・医師会でも開催されている。探すなら財団の研修検索から
- 申請は最終受講日から5年以内に1回限り/登録料10,000円/有効期間5年
- 集中講座は6日間で要件を丸ごと満たせる(各地の研修を積み上げて回る必要がない)
- 受講そのものでつまずくことはまずない。大変なのは「席を取ること」と「維持すること」
- 受講料は9年で約2倍、先着順は抽選に。いまの最大のハードルは席の確保。取るなら早いほうがいい
- 単位を取ること≠認定されること。申請のタイミングは戦略的に考える余地がある
資格を取っただけでは、産業医の仕事は始まりません。最初の一社をどう見つけるかは、正直かなりの壁です——その越え方は産業医の「一社目の壁」の越え方に、求人の探し方そのものは産業医求人の探し方にまとめました。
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この記事を書いた人 医師のキャリア迷子相談室。医師・医学博士・日本医師会認定産業医。大学病院勤務を長く経験したのち、クリニック勤務へ。転職活動の実体験はnote「医師転職体験記」で連載しています。
※認定産業医制度の要件・単位数・受講料・申込方式は改定されます。本記事は執筆時点の公開情報と個人の経験(2017年受講)に基づくものであり、最新かつ正確な情報は日本医師会・産業医学振興財団・産業医科大学の公式発表をご確認ください。


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